患者さんや患者さん以外の方々とお話しをしていて『肩が凝っていて〜』という話はよく耳にします。実は肩こりには、”肩こり”と判断するための明確な基準や検査項目はないんです。
ご自身で肩が凝っている、そう感じるのであればそれは”肩こり”となります。
他の人に肩が硬いですねと言われたとしても、自分がそう感じてはいなければそれは”肩こり”ではないということになります。
厚生労働省の2022年の健康状況の調査において、身体の不調を抱える人の中で、肩こりの自覚症状がある人は男女ともに腰痛がある人に次いで2番目に多い結果となっています。1)
ではなぜ肩が硬くなるのか、どのようにして肩こりが起こるのか、そのメカニズムと、肩こりに対するケアの方法、鍼灸が肩こりにアプローチできること、また、隠れている”肩こり”ではない疾患の可能性について、本記事で解説していきます。

本記事では、鍼灸院 翠〜みどり〜の院長である吉村 粧文が、日々さまざまな患者様と関わっていく中で得た知見をもとに、日常生活でもみなさまに役立つ身体のケアの情報を発信しています。
肩こりが起こす弊害
まず”肩こり”になると何がいけないのかということを説明します。
自覚的に肩が凝っているという方に多く当てはまることかもしれませんが、以下のような状態ではありませんか?
- 首や肩の筋肉の緊張が強くなると肩が痛い
- しこりができたような硬さがある
- 首や肩を回したくなる
ただそれだけではありません。
そのいわゆる凝っている状態をそのままにしていると頭痛やめまい、吐き気、首や背中に痛さなど、その他のつらい痛みや症状につながることがございます。
肩まわりの痛みや違和感だけにとどまらず、別の部位にも症状が出始めるつらい状況は未然に防ぎたいですよね。
肩こりのメカニズム

それではなぜ肩こりが起こるか。
肩こりとは読んで字の如く、肩の筋肉が凝っている状態です。ではなぜ”凝る”という状態になってしまうのかを解説します。
筋肉の中には無数の血管が通っております。それらの血管から筋肉に栄養が運ばれ、筋肉が伸び縮みすると血管も一緒に伸び縮みする仕様になっております。
筋肉が伸ばされた状態が続いてしまうと血管も伸ばされてしまいます。
そうすると、血流量が減ってしまいます。その状態が続くと血管から筋肉に栄養を送ることができないため、筋肉は虚血状態になり、硬くなってしまいます。
また、なぜ身体の中でも肩こりが多いのかというと、人の頭ってすごく重いんですよ。頭を支えているのが、首や肩、背中といった部分で、直接の負担になりやすいために肩こりとなりやすいとなるわけです。
後は、パソコン作業やスマホをいじる姿勢、料理などをしている時も下を向いてやる作業が多いと思います。
首が前に出て、肩がぐっと前に入る、マキ型の状態で作業することになるので、背中や肩の筋肉が伸ばされた状態を作ってしまっている。それを長時間続けることによって、筋肉が伸ばされ続け、硬くなることに繋がっていきます。
肩こりのケア
次に肩こりをどのようにケアしてあげれば良いのか。
肩こりを解消する・予防するケアとしてできることは、肩こりのメカニズムをもとに整理すると、血流量を上げてあげる、そして筋肉を柔らかくしてあげるということになります。
こうすることで肩こりが改善される、肩こりになりにくい身体を作れるというのが基本的な考え方です。
では具体的にはどんなことをすれば良いのか、まず血流量をあげるためには、温めてあげることです。お風呂に浸かる、シャワーを重点的に当ててあげる、ホットパックで首や肩周りを温めてあげましょう。
そして筋肉が硬くならないようにするために、同じ体勢をしなければならない時には、定期的に肩や首を回してあげる。そうしてストレッチしてあげることで、筋肉が伸び縮みして血流がよくなり筋肉の疲労感は緩和されます。
これが簡単に始められる肩こりのケアとしての始めの一歩になるわけです。

他には、水分不足やミネラル不足も筋肉を硬くしてしまう原因になります。しっかりと水分を補給していきましょう。
鍼灸が肩こりにアプローチすること

自分での肩こりケアを行なっているにも関わらず、改善しないという方もいらっしゃいます。凝りの状態がすでに自分でできるケアでは対処できず、頭痛やめまいにつながってしまっている場合もございます。
そんな場合の1つの解消方法として、鍼での治療があります。
鍼は部分的に硬く、凝っている筋肉の硬結と言われるポイントや筋肉でもより深い部分に対して、アプローチすることができます。
また、緊張がつよい筋肉は筋繊維と言われる部分と筋肉を包む筋膜の滑走性が悪くなります。
そして動きが出なくなりくっついた状態を動きを出し、良くしてあげることができます。
主にこれらのことから肩こりの解消につながるとされます。
肩こりではない症状がある可能性
ここまで肩こりの仕組みとケアについて解説してきましたが、気をつけなければいけないのがただの肩こりではない可能性がある場合です。
代表的な疾患として、
- 心疾患(心臓が悪い方で放散痛と言われるものが出てしまう)、
- 肝臓の状態が背中に出ている、腎臓の状態が腰に出ているなど内臓疾患から痛みが発生しているケースなど
です。
これらに気づくための1つのポイントは、例えば安静にしていても痛い場合です。
この場合は筋肉の問題ではないことが考えられます。
こういった場合は医療機関を受診する、また健康診断で定期的に自分の状態を確認するなどを行なってください。
まとめ
私自身、鍼灸師として様々な患者様の身体の状態を観察するということは行なっておりますが、自分の身体のこととなると粗末にしがちな時も多々あります。ただ自分の身体の状態を良くする、機嫌をよくすることは自分にしかできません。
ちゃんと向き合ってあげるといいなと思っています。
今回は肩こりの仕組みを解説し、自分でできるケアの基本として、温めること・ストレッチをすることを紹介しました。特に寒い時期には肩こりにもなりやすくなります。水分をしっかりと摂り、簡単なところから始めていただければと思います。
出典一覧
- 1) 「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf)